Okamoto's

『Dance With Me / Dance With You』

SPECIAL INTERVIEW

― HAMA OKAMOTO Part ―

——岸田さんは4人の意思統一を促したかったのかな?

ハマ そうだと思います。「HAPPY BIRTHDAY」を岸田さんにプロデュースしてもらったときも、間奏のコード進行を“俺がタバコ吸ってるあいだに4人で考えて”って言われたことがあって。あのときも今回も岸田さんは4人が向かおうとしている方向が同じだということを俺らに自覚させたかったんだと思います。事実、今回の歌詞も、始めに4人がそれぞれ何を歌いたいか岸田さんがタバコを吸う10分間で作文にしてくれ、という提案を序盤に受けまして、もちろん話し合わないで書いたんですけど、書き方が違うだけで、照らし合わせときに言いたいことがほとんど一緒だったんですよ。そこからLINEのやりとりなどを経て選ばれたフレーズが「Me」のど頭の語りの部分でひとつにまとまったんですけど。

——あそこのポエトリーリーティング調のセクションに今のOKAMOTO’が訴えたいこと、そしてこの曲で提示したいことの源泉が生々しい筆致で凝縮されていて。

ハマ うん、そうですね。基本的にショウが語っているなかで、途中でサイドMC的にボーカルがダブルになって、3人のメンバーの声が重なってますよね。あそこはそのフレーズを書いたメンバーの声が重なってるんです。岸田さんが最初に“この曲で何を聴かせたいのかようわからん”と言ったのは、4人の統一した想いが感じられなかったということなんですよね。それを俺らは考えてるつもりだったけど、しっかり自覚できていなかった。あのど頭の語りの歌詞を4人で書かせることで、それを確認させたかったんだと思います。実際にあの部分ができたときに曲のテーマがはっきり定まった感触がありましたし。結果的に岸田さんから“いままでOKAMOTOS’の歌詞をいいと思ったことはなかったけど、今回初めていいと思った”という言葉も聞けて。

——要は、OKAMOTOS’が提唱したいことをひとつの塊にして、それをもっと際立たせたほうが絶対にカッコいいじゃんということだと思うんですよね。

ハマ そう。歌詞のなかに〈ローリングストーンズが最高ってことになんで みんな気づかないだろう?〉というフレーズが出てきますけど、俺はそういう描写に対しては昔から否定的なスタンスだったんです。

——固有名詞が登場するような。

ハマ そうです。“べつにそれは言わなくてよくない?”というスタンスで。あのフレーズはコウキが書いたんですけど、最初に上がってきたときも俺は“う〜ん”という感じだったんですよ。ただ、そこも岸田さんが“いや、はっきり言ったほうがいいよ”と。俺は歌詞の世界に関してはまったくアイデンティティがないので、単純に聴いた響きで意見するのが自分の役割だと思ってるんですね。でも、一方で、言いたいことをはっきり書いたほうがいいという意見にも今回なるほどなと思えましたし。

——アレンジにはくるりの最新アルバム『THE PIER』にも通じるような岸田氏ならではの息吹が入ってますね。

ハマ そうなんです。そもそも完成したベーシックトラック自体もかなりよかったんですけど、岸田さんが“俺がこっからさらに壊すから”って言って(笑)。夜中の3時くらいまでひとりで作業してくれたんです。

——そこでストリングスも含めてさらにいろんな音が加わっていった。

ハマ そう。歌録りのときに完成したアレンジを聴いたんですけど、メンバー一様に興奮しましたね。“何これ!?”って。

——冒頭のポエトリー部分を経て、イントロから時空を超越するようなサウンドスケープが広がっていく。

ハマ  あの感じは完全に『THE PIER』の延長線上にあるじゃないですか。俺らは岸田繁のファンであるとともに、くるりのファンでもあるので。『THE PIER』というあれだけの大作の息吹を注入してくれたことにすごく感動しました。「Me」は岸田さんのプロデュースであると同時にコラボレーションだと思うんですよね。だからこそ岸田さんと一緒にやった意味があると思うし、あのアレンジによって楽曲のストーリー性が一気に増した。ここから派生していく物語を感じられるような壮大な楽曲になったことも大きいなと。ロックソングとして、メッセージソングとして、ポップスとして“こんな曲は聴いたことないよね”と感じてもらえると思います。

——OKAMOTO’Sのパブリックイメージを超えるロックアンセムでもあり、未体験のポップミュージックとしての刺激にも満ちている。だからこそ、「Me」のアンサーとして4人で「You」をブラッシュアップしようとなったんだろうし。

ハマ そうです。「You」の原型を聴いてもらったときに岸田さんにははっきり“OKAMOTO’Sが4つ打ちやこういう打ち込みをやる必要はない”ってバッサリ切られたんですけど、でも、「Me」ができたことで「You」の存在感がより際立つなと確信できたので。そもそも「You」は「You」で、4人で作った原型の段階から手応えがありましたし、岸田さんに「You」の要素をバッサリ切られて、半ば一度あきらめた曲でもあったので。さらに、「Me」と「You」を聴き比べてもらうことで、岸田繁プロデュースではこうなって、4人で作るとこうなるという対比を見せられたらシングルのパッケージとしてもおもしろいと思ったんですよ。

——相乗効果も及ぼすだろうし。

ハマ そう。ちなみに「You」の間奏は「Me」を作ってから出てきたアイデアで、あれは完全にThe Whoのエッセンスなんですよね。そこで派生する話があって。「Me」が生まれたときにショウから“この曲は次のアルバムのテーマソングであり、エンディングも担えるね”という話があって。メンバーも、確かに「Me」を軸に次のアルバムを作れるぞって盛り上がったんです。