そして、この曲からストーリーも本格的に動き出します。ライヴハウスなのかクラブなのか、仕事終わりで遊び場に出向いて酒を飲んで女の子と出会って。
ショウそうです。仕事が終わってようやく解放された主人公がいて。そこで出会った女の子とどこまで意気投合したかはリスナーの想像に委ねつつ、ひとりの女の子とわかりあえたという感触が重要で。
ハマそこまで大胆になれない主人像という面はあるよね。
レイジうん、だから酔っぱらいすぎてどこまでいったのかわからないくらいの感じでいいと思う。
4.「NOISE 90」
作詞作曲はコウキくんですね。コウキくんはボーカルでも参加していて。
コウキ「Dance With Me」の冒頭のポエトリーリーディングの歌詞をアルバム全体に散りばめていて。実はこの曲もそのフレーズの中から主人公の状況を描写する歌詞になっています。
レイジ掘り下げれば掘り下げるほどすごいね。
ハマこの楽曲はすごくわかりやすいと思う。歌詞で伝えていることの状況描写としても。
ショウ少なくとも俺らと同世代ならすごく共感してもらえる歌詞だと思います。実はコウキから送られてきた元の歌詞はこれの倍くらいの尺があるものでしたが(笑)。
コウキそうそう(笑)。
ハマ短くしても尺に収まりきらないのでラップ調に歌うしかないなと。
ショウそう。さらにコウキにも歌ってもらって、すごくいいデュエットができた。ストーリー的には主人公が朝まで飲んで、始発に乗らないと、というところですね。
5.「夢の中へ…」
インタールード的な曲ですね。
ショウまさに。
ハマ僕は何もしてないです(笑)。
レイジ俺も(笑)。
ショウこれは俺とコウキの結晶だね。
レイジこの曲はレコーディング中に必ず誰かが寝ちゃうっていう逸話があって。メンバーだけじゃなく、スタッフさえ寝てたから(笑)。
でも、それくらい気持ちいいんだよね、音像が。
レイジそういう周波数が出てると思います。
アルバムの全体像を考えたときにこういうインタールードは絶対に必要だと思ったはずで。
ショウそうですね。ロックオペラというテーマを設けたときにこういう楽曲は絶対に必要だと。The Beach Boys的なコーラスを軸に曲を作りたいと思いました。聴いてるうちにコウキと“これ、Matin Dennyの『EXOTICA』っぽくない?”という話にもなりましたね。
ああ、確かに!
ショウ“Brian Wilson+Martin Dennyでいこう!”という方針になって。あとは、主人公が酔っている状態で半分夢の中にいる様なイメージで。この主人公は次に訪れる夜の幻まで安全にたどり着きたいと思っていて。現実には何も期待してないんですよ。
ハマゲストボーカリストとしてOKAMOTO’SではおなじみのUCARYに参加してもらいました。OKAMOTO’Sに入る女性の声で、バンドの空気感に合うのはUCARYが一番ハマるという感じにもなっているので。
レイジ常連だよね。主人公がクラブで出会った女の子の残像を感じる役割を担ってもらえるとも思ったし。
6.「TOMMY?」
内容としては、まさにThe Whoの『Tommy』に対するアンサーソングとも言える。
ショウそうですね。最初は、カギを失くし、ケータイを失くし、サイフを失くした主人公のアクシデントをアルバムの中で1曲ずつ描こうというアイデアもありましたが、ハマくんから“全部を1曲にまとめたほうがいいんじゃないか?”という提案があって。それなら、カギ、ケータイ、サイフを擬人化して、そいつらが曲の中に登場して歌い出すという展開にしたら面白いんじゃないかと思いまして(笑)。
レイジくんがカギで、ハマくんがケータイで、コウキくんがサイフで。それぞれのボーカルにザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」的なエフェクトをかけて(笑)。
ショウまさにそういうアイデアで。
ハマこれってもはや狂気じゃないですか。ある種の怖さも感じるし。
そう、このアルバムはある種の恐怖心も覚えさせるのも重要なポイントで。
ハマそうですね。あとは、現代版三重苦をはっきり描くならこの曲しかないと思ったときに強烈なインパクトを与えないといけないと思ったので。そのためにも三重苦を1曲に集約させたほうがいいと提案しました。
コウキ楽曲自体はファンキーでカッコいいよね。
ショウこんなにDaft Punkミーツ様々な要素になるとは(笑)。 サビはThe Who、Bメロは村八分、Cメロはビートルズ。
まさに組曲だよね。
ショウ説明するまでもなく「Get Up!」というメインフレーズしかり、曲中のフレーズもはまさにJames Brownですし。主人公が夢から覚めるときは〈Get Up!〉って言いたかった。そこは譲れませんでしたね。
7.「うまくやれ」
ハマくん作曲で、クラビネットが効いてるファンクナンバーですね。
ハマ他の楽曲はデモの完成度が高くてそのまま進んでいたんですけど、1曲くらいは息抜きという意味でも久しぶりにバンドでジャムってみてもいいのかなと思いまして、序盤の制作合宿の最終日にみんなに提案したんです。個人的にも「べース・マガジン」でGeroge Clintonと対談した影響がモロに出てますね。
そう思った(笑)。
ハマあらためてGerge Clintonワークスを聴き直したときに、70年代のファンクを現代に昇華する流れが今の日本のシーンにもありますけど、全部タッチが違う。なので、これくらいオーセンティックにやったらおもしろいだろうなと思ったんです。
ライヴでコール&レンスポンスもしやすい曲ですよね。
レイジNaughty By Nature的な(笑)。
ストーリーとしては会社の上司が主人公に説教をたれる描写が出てきて。
ショウそうです。少し年上の上司の様な存在。
ハマこういう人って現実にもいるじゃないですか。鼻につく感じの。だからこそ、こういう曲調に合うなと思いましたし。
ショウ最初はThe Whoの『Tommy』のように曲ごとにいろんな人物を登場させる構想もありまして。この上司はそのひとりでもあったんです。
8.「HEADHUNT(Album ver.)」
ロックオペラというテーマが浮上する前にリリースしたこのシングルが、こうして『OPERA』の一部として違和感なく存在しているというのもおもしろいですよね。
コウキ本当に。〈耳を塞いでも 瞼を閉じても〉という頭の歌詞の内容を受けると、「うまくやれ」から地続きのニュアンスもある。
ショウ「HEADHUNT」と「ZEROMAN」をいかにこのアルバムに必然性をもって存在させられるかはすごく考えました。正直、ここまでうまくいくと思っていなかったですね。