INTERVIEW

インタビュー

text : shoichi miyake(ONBU)
photography : yoshiyuki okuyama (band)

——まずは、あらためて1月にリリースした『Let It V』とその後のツアーの手応えをどのように感じてるかを訊きたくて。バンドの音楽的なアイデンティティを明確に打ち出し、現行の日本のロックシーンに対する問題提起も投げかけながら、5周年、5枚目で最高傑作を作るべくして生まれた最高傑作だったと思うんですけど。

オカモトショウ今まで以上に伝わってるなって感じましたね。ステージに出て行ったときの歓声が明らかに大きくなってたし、みんなで踊る曲の一体感もすごくて。今まででいちばんいい景色をステージから見れたなって。"今、自分たちがやるべきことはなんだろう?"って考えたときに、自分たちがカッコいいと思う音楽をもっと広めたいと。じゃあそこで今のシーンに対しても言いたいことを言って、自分たちはしっかり作品とツアーで答えを出したいと思ったから。

——OKAMOTO'Sの音楽性、ロックの核心はもちろん享楽に耽るような快楽性もあるんだけど——それは高い演奏力やさまざまなジャンルに対する深い造詣、そして誰よりも純粋な音楽愛に裏打ちされているもので。その内側の部分もフィーチャーしないと、ただ若くて元気で楽しいだけのバンドで済まされちゃうという危機感があったと思うんですよね。端的に言えば、なめられないための5周年、5枚目のアルバム、そのツアーだったと思うし。

ショウうん、そうなんですよね。問題提起はどこまで細かくリスナーやライヴに来てくれたお客さんに受け取ってもらったかわからないですけど、俺たちの心はちゃんと伝わったと思っていて。

オカモトレイジあと、ツアーは単純にライヴ自体が毎回よかったしね。どの会場でも毎回、満足のいくライヴができたから。

——やっぱりライヴに向かう意識も変わっただろうし。

ショウそうですね。意識が変わったところもあるし、お客さんに見せたいものをちゃんとイメージできるようになったんですよね。その前のツアーまではずっと手探りなところがあったけど、ようやくつかめたなって。

レイジ男のお客さんがすごく増えたんですよ。それもうれしくて。今は男女比半々くらいになって。

——そんなに増えたんだ。

レイジ確実に増えましたね。

ショウ今まではコール&レスポンスでも女の子の声が圧倒的に勝つみたいな感じだったんですけど、今はちょうどいいバランスで拮抗していて。

————特に若い男性客はロックバンドにある種のヒーロー像を求めてると思うんだよね。そこには気骨のある存在感も必要で。それが増したってことだと思う。

ショウそうだとうれしいな。ホントにいいツアーになったと思います。今の4人でできるマックスのステージを見せられたなって。

——コウキくんはどう?

オカモトコウキ『Let It V』で曲がそろったなって思うんですよ。こういうライヴにしたいからアルバムにはこの曲を入れようっていう発想もあったし。あとは、レコーディングでもライヴを意識してダビングを極力少なくしたから、再現しやすかったんですよね。それも大きかったですね。

——ハマくんはどう?

ハマ・オカモト『Let It V』を出したときの僕らのインタビューってビッグマウスというか、言いたいことを言う感じだったじゃないですか。"なめんなよ"みたいな感じもありつつ。それに対して"何を偉そうに"っていう反応ももちろんあって。でも、そう思わせた時点でこっちの発言に興味をもたせることができたわけで、その時点で勝ちだなって思ったんですよね。それで、実際にアルバムを聴いてもらって全然よくないと思ったらもうそれはしょうがないし。これまでファンでいてくれた人が"そんなこと言うならもう無理です"みたいになったらヤだなとは思ったけど(苦笑)、ファンの人たちは作品も発言もちゃんと受け止めてくれたって感じられたので。

——不安もあった。

ハマまあ、賭けじゃないですか。みんながみんな"偉そうに"って思って無視されたらいい結果は出ないし。そういう意味では説得力のあるバンドになる第一歩を踏み出せたというか。きちんとアルバムと発言とツアーで自分たちの理想像をパッケージできたと思うから。バンドシーンにいくつかある輪の中で、OKAMOTO'Sはきちんとカッコいいロックを鳴らして、言いたいこともちゃんと言うバンドなんだって認識されたなってツアーで感じられたので。間違いなくそれは成果だなと思いましたね。俺らは最新が最高ってあたりまえの事だと思ってるので。だからこそ、これからアルバムもツアーもどんどん更新していかなきゃと思ってるんですけど。でも、一方で5年やったらこれくらいになってなきゃなという思いも同時にあって。19歳でデビューしてるんで。当時からすごく受け入れられやすい音楽性ではないんだなとは薄々感じてはいたけど、3年目くらいではっきりそれを自覚して。今はちゃんとそこも客観視したうえで、自分たちが表現すべき音楽をちゃんと届けられてると思うんですよね。

——ツアーファイルのSHIBUYA-AXのMCでハマくんが"今、こんなにいろんなビートで踊れるお客さんはなかなかいませんよ。自分たちを誇りに思ってください"って言ってたじゃない? あれがすごく印象的で。

ハマやっぱりお客さんにも酔ってほしいんですよね。ステージに立ってる僕らもそうなんで。"間違いないっしょ"って思ってほしい。今回、そういうことをようやく口に出したり、動いたり、目に見える形で提示したっていう。その結果、これまでのツアーにない演出も自然と実現したし。

——OKAMOTO'Sなりのエンターテイメントのあり方にも着手したライヴになった。たとえば「Beek」にDAFT PUNKの「Get Lucky」をマッシュアップ的にインサートしたのもそうだし。

ショウまさにそうですね。どう楽しませるか。あそこで「Get Lucky」を挟んだ俺たちの意図を理解してくれる人がどの会場にもたくさんいて。みんながみんな理解してるわけじゃないけど、意図をわからない人も今はなんかカッコいい曲だなって思ってもらえるだけでいいと思うし。

コウキそういう意味でも、俺たちにしかできないことをやってる実感がすごくあったツアーでしたね。「Get Lucky」しかり、やりたくてもできない人はいっぱいいると思うから。

——スキル的にも。

コウキそうですね。今年の「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に僕らは両日出るんです。初日のEARTHTENTのトリはFRIDAY NIGHT SESSIONっていうセッションライヴをやるんですね。僕らはその箱バンをやるんですよ。奥田民生さん、甲本ヒロトさん、チバユウスケさんなど錚々たるアーティストが入れ替わり立ち替わり登場して、僕らの演奏で歌うっていう。

——日本のロックにおける生きる伝説たちが。

コウキそうそう(笑)。それってほかの若いバンドには絶対できないと思うんですよ。

ショウそうだね。

ハマ選ばれるかどうかは別にして、それをやること自体は10年後も20年後もできると思うんですよ。ただ、今、そういう場所に呼ばれたことに満足しちゃいけなくて。僕らだって単独でZEPPツアーをやりたいと思うし、アリーナクラスの会場でライヴをやることに興味がないわけじゃない。むしろ、こうやってFRIDAY NIGHT SESSIONの箱バンをやるようなバンドが単独で大きな会場を埋めるようにならないとシーンが面白くならないと思うので。このまま低空飛行を続けると、ホントに俺らがいちばんなりたくない、ただの音楽好きなおじさんになっちゃうから。これから自分たちのステージを何段階も上げなきゃいけないなって思いますよね。大きな会場に立って、初めてほかのバンドとの力量の差も示せると思うし。

——うん、そこは貪欲になってほしい。

ハマ先日、ドリカムの中村(正人)さんと対談したときに、中村さんが"今の若いアーティストには売れたいっていう貪欲さをあまり感じない"と言っていて。"俺たちが若いときはみんな売れたい、売れたいって言ってたよ"って。"俺らは売れたいです"って言ったら、"それはちゃんと言ったほうがいいよ"って中村さんに言われて。その通りだなと。

——うんうん。もっとロックバンドに夢があっていいと思うんだよね。最大級のステージを描くときにどこかで制限してないかなって。言葉にせずとも邦楽主体のフェスのメインステージに立つことを夢にしているようなバンドも多いと思うし。そういう意味では当然のように海外でも成功しようとしてるONE OK ROCKとかシンプルでデカい夢があってカッコいいなと思うのね。もちろん、OKAMOTO'Sにはまた違う攻め方があると思うんだけど。

ハマうん。キャパシティを大きくしたいというと、自分たちのことしか考えてないように思われがちですけど、それは受け入れられる層をどこまで広げられるかという話で。それくらい多くのお客さんが来るってことが大事だから。極端に言えばお客さんが集まるなら下北沢GARAGEで1ヶ月連続やってもいいし、LIQUIDROOMで1週間連続やってもいいんですよ。フェスのステージでも正直"ここなんだ?"って思うときもあるけど、それは結局"あんたたちはこれくらいしか人を集められないんで"って遠回しに言われてるようなもので。それは悔しいですよ。海外でのライヴ云々で言ったらデビュー前からやってるわけですから。でも、それは世間に伝わってないし、だからこそもっと自分たちの音楽と存在を広く伝えないといけないって思うんですよね。

——で、『Let It V』という決定打的なオリジナルアルバムのあとに5.5thアルバムと銘打って、この豪華なメンツと交わったコラボレーションアルバムをリリースします。このコラボアルバムもどういうゲストを迎えて、どういう音を鳴らすかということ自体が1つの大きなメッセージになってますよね。

ショウうん。そもそもコラボアルバムを出そうという企画自体は3年前にあったんですよ。俺たちが個人でもいろんなアーティストのサポートをしたり、ゲストに呼ばれたりするなかで、これだけ絶妙な立ち位置にいるならきっと面白いコラボアルバムが作れるだろうという話があって。ただ、当時はまだ僕らの音楽的な方向性が固まってなかったし、コラボ相手とのスケジュール調整も含めてなかなかうまくいかなくて。それで1回、企画自体が流れたんですね。

——3年前っていうと『欲望』のころだ。

ハマそう。今思うと、当時は気が早かったんですよね。ぶっちゃけて言えば、オファーした相手からいい返事をもらえなかったし。業界内の信頼や俺らのネームバリュームが今よりもたいしたことなかったから

——なるほど。

ハマ僕らとしては"この人にリミックスしてもらいたい"などいろいろアイデアがあったんですけど、スタッフとの意思疎通もあまり噛み合ってなくて。でも、今はようやく"こんなコラボアルバムをほかに誰が作れるんだ!?"って堂々と言えるタイミングがきたなと思っていて。『欲望』のころは言えなかったんですよね。

レイジあとはダジャレだけど、5周年で、5枚目に『Let It V』というタイトルのアルバムを出して、"次は5人目のメンバーを入れたら面白いんじゃない?"って話になって。そこでコラボアルバムに繋がったっていうのもありますね。

コウキだから、三宅さんが言ってくれたようにホントに『Let It V』と地続きな感じがあって。『Let It V』でOKAMOTO'Sがいろんな音楽的スタイルができることを証明して、その時の取材で4つ打ちのことしかり、今のロックシーンに対してアンチテーゼを示しましたと。でも、まだまだやれることはあるし、OKAMOTO'Sのルーツは昔の洋楽だけじゃなくて、中高生のころにリアルタイムで聴いてた日本の音楽もあるので。奥田民生さんやスカパラ、RIP SLYMEといった日本の音楽シーンに名を残してきた先輩たちと一緒にやって何を見せられるかっていうのをここで示したいなと思って。

ハマこれまでホントにいろんなアーティストと音楽的に交わってきて、自分たちはそこに誇りをもってるんですけど、世間的にはそこで得た実績や成果をわかりやすく言葉にしたり具体的な形で表現しないと伝わらないんですよね。それは最近すごく痛感してることで。

——TwitterとかSNSの世界では伝わってると思っていても、リアルな世間はその向こう側にあるからね。SNSだって限られたコミュニティなわけだし。それはカルチャーに関することではなくて、政治にだって感じるし。

ハマうん、そうですよね。だからこそ、いろんな場でちゃんとわかりやすく伝えることってホントに大切なんだなって。

——そうだね。

ハマこのコラボアルバムはそういう思いを音源化できたらいいなと。でも、これをただの縁起物にしちゃいけないわけで。大事なのは、ここからなんですよね。結局、"OKAMOTO'Sの代表曲ってなんですか?"って訊かれて答えられるのは、現状、一部のファンしかいないと思うんですよ。その人たちにはすごく感謝してるけど、自分たちに厳しい言い方をすれば、コミュニケーション能力に長けてるおかげでいろんな同業者に気に入ってもらえて、その人たちと張り合える音楽的な技量もセンスもあるけど、まだそれしかないとも言えるから。

——うん、今後、誰もが知ってるような代表曲は絶対に必要になってくると思う。

ハマうん。まだまだ"じゃああんたたちはバンドとして何があるの?"って言われかねない状況だって自覚してます。ただ、そこでビビってたら何も面白いものは生まれないから、このコラボアルバムもおもいっきり楽しませてもらいました。でも、これを出すからこそ、次にやることがよりシビアに問われると思ってます。そこでうまく転がっていければこのコラボアルバムをあとで聴く人も"すごいことしてたんだね!"ってなると思うし。これまでずっと僕らを応援してきた人には"やっぱりOKAMOTO'Sが好きでよかった"って思ってもらわないといけない。だから、このコラボアルバムはすごくいいものができたとは思う一方で、そういう危機感も併せもってるんですよね。

——うん、それでいいと思う。これからどんどん攻めていってほしい。この前、「SMAP×SMAP」に出たときもホントに痛快だったから。やっぱりOKAMOTO'Sはどれだけお茶の間に侵入しても、音楽的な裏付けに確固たるものがあるから全然セルアウト臭がしないし。それは得がたいですよ。

コウキうん、自分たちでももっとお茶の間に出ていきたいと思ってるし。CDが売れなくなったという問題を抜きにしても、音楽を愛してる人間が誇りをもってロックミュージックを鳴らしてるところをもっといろんな人に見せなきゃいけないと思う。さっきONE OK ROCKの名前が出ましたけど、ああいうストイックな姿勢で世間とも勝負してる姿はすごくカッコいいと思う。だけど、自分たちは自分たちの戦い方で勝たなきゃいけないなって。

——今回のコラボ相手の人選は、既にバンドと面識のある人、しかも男性ばかりで。それはあえてだと思うんですけど。

ハマそう。今回は関わりが深い人たちにフォーカスを当てていきたいなと思って。それこそRIP SLYMEとROYくん以外はみんな同じ事務所だし。女性アーティストも含めて予想外の人と交わって起こるマジックもあると思うし、それもやろうと思えばできたんだけど、今回はこれまでの5年間や『Let It V』の流れをちゃんと汲んだコラボアルバムにしたほうがいいと思ったから。自然と"やっぱりこの人にオファーしたいよね"って人達にお声がけして、みなさんに快諾してもらったんです。

——RIP SLYMEは特に最近、急接近したよね。

ハマ僕がRIP SLYMEの「SLY」にゲストベーシストとして参加して、そこから(音楽ドキュメンタリー映画)『LOVE SESSION』でOKAMOTO'Sとしてセッション相手にオファーさせて頂いて。"次は一緒に曲を作るしかないよね"って言ってたし、タイミング的にバッチリでした。

ショウセッションのリハーサルと今回の「Wanna?」の制作も含めて数ヶ月に4、5回会うみたいな(笑)。

コウキ沖縄国際映画祭も一緒に行ったしね。

——とにかくグループのムード、性質がハモってるよね。

ハマそうなんですよ。音楽的には違うアプローチをしてるんだけど、何が合うって人間的に合うんですよ(笑)

——「Wanna?」の制作はどのように進んでいったんですか?

ショウそもそもラッパーとのコラボはずっとやりたかったことで。で、いざやるってなったときにやっぱり王道な曲にしたくて。

——王道という意味では、「Wanna?」はRUN-DMCとエアロスミスが融合した「Walk This Way」ラインに則った曲とも言えるよね。

ショウそう。イメージとしてあったのは、「Walk This Way」やDragon Ashの「I LOVE HIP HOP」で。

コウキいわゆるミクスチャー感があるものですよね。

ショウガーン!とくるリフがあって、サビはみんなで盛り上がれるような曲を作りたくて。さらに、(DJ)FUMIYAさんにスクラッチを入れてもらったり、俺たちの演奏をエディットしてもらうことで、俺たちをRIP SLYME化してもらうというテーマもありつつ。

ハマ俺らの演奏をサンプリングのネタにしてもらうっていうね。 RYO-Zさんが〈感覚的に放り込んで start it〜〉のメロディを提案してくれたり。

——あのブリッジ部分はRYO-Z氏の提案なんだ。

ハマそう、あれはRIP SLYMEサイドが提案してくれて。全体像ができるまでのキャッチボールはけっこうして。オケは俺らが2回くらい演奏して、それをFUMIYAさんに渡してエディットしてもらうっていう流れでしたね。

レイジめっちゃ楽しかった、制作。RIP SLYME最高っす。

——ホントに、フックだらけの曲だよね。エロいリリックも含めて。

ハマエグいワードはほぼSUさんですけど(笑)。この前、自分のラジオ(J-WAVE「RADIPEDIA」)で「Wanna?」をオンエア解禁したときに、Twitterで"どっちのよさも出ていていい!"っていう反応をたくさんもらえて。すごくうれしかった。どっちかっていうと俺らがRIP SLYMEのイメージを汚す可能性があるわけじゃないですか。RIP SLYMEのファンの人たちから"この感じは違う"って言われるのがいちばん残念だから。

——ここまでガッツリ生音に乗っかってマイクリレーしてるRIP SLYMEもかなりフレッシュだなと。RIP SLYMEにとってもすごく刺激的だったと思う

コウキめくるりとリップスライム名義の曲や布袋(寅泰)さんとのコラボもあったけど、グループとしてここまで完全にバンドにフィーチャリングするのは初めてだって言ってましたね。

ハマRIP SLYMEもRIP SLYMEで現場に俺らみたいに違う音楽の血が通ったやつらが来て、FUMIYAさんのスクラッチに対してみんなでいちいち"やべー!"って盛り上がるのもかなり新鮮だったと思うんですよね。ホントに楽しかった。

——続いて、スカパラとの「Heart On Fire」 はラテンロックなスカナンバーで。スカパラともいろんなアプローチが考えられたと思うんですけど。たとえばオーセンティックなスカサウンドだってできただろうし。

レイジそう、俺も最初はスウィートなロックステディがいいんじゃないかっていう提案もして。

コウキちょっとジャジーな曲もいいよねという話にもなったり。

ハマ俺とレイジは高校のときに部活で鬼のようにスカパラのコピーをしてたんですよ。

——それは知らなかった。

レイジブラスバンド部という名のスカパラのコピー部でしたね。いろんなスカのパターンを超練習してました。だからスカって普通のロックバンドがやったらたぶん難しいと思うんですけど、すぐ対応できましたね。

ハマそう、ノリをすぐ理解できたのは当時からスカパラをやってたおかげであり。単純にめちゃくちゃファンだったし。あとは谷中(敦)さんの歌詞が大好きで。で、今回は谷中さんに歌詞をお任せしたいって提案させていただいて。スカパラって長年、コラボをやってきてるバンドじゃないですか。しかも最近のコラボはロックバンドシリーズだったので、その流れでよくOKしてくれたなって。ホントにありがたかった。

コウキ『OKAMOTO'S』に収録された「Give & Take」でスカパラホーンズと沖(祐市)さんに参加してもらって、そのときも"また一緒にやれたらいいね"って言っていただいたんですけど、予想以上に早く実現できましたね。

レイジで、こういう曲になった流れは、ショウが超イカれたデモを作ってきて。

ショウスカパラとは燃えるようなラテンスカ的な曲をやりたいと思って。最初に俺がみんなに送ったデモはどのジャンルにも当てはまらなくてみんな困惑してたんですけど(笑)

レイジドラムもスカのパターンで叩いてもハマらないみたいな(笑)

ショウで、サビを変えたりして、あらためてもう1回デモを録って。そこで形が見えてきたんです。そのデモをスカパラに投げたら一気にバーンとできあがって。

コウキしかもこれ、テイク一発ですから。

——おおっ!

レイジクリックも聴かずにアナログでテープを回して、コウキのイントロから始まって1回しか演奏しなかったですね。

ハマモニターで全然自分の音が聴こえてないからあとで"バランスとらせてー!"っていうやつ(笑)。でも、これは一発でハマって。

ショウ最高だよね。あんな大人数で録ったのに。

——谷中さんの歌詞、エロいね。RIP SLYMEの解放的なエロいリリックとはまた違う、湿度と熱気に満ちた色気があって。

ハマ歌詞ヤバいっすよね。

ショウ最近ジュリー(沢田研二)が好きで。俺がジュリーっぽくなることでこのバンドにさらなる勝機があると思うんですよ

——ああ、うん、いいと思う!

ショウそれが今後のテーマなんですけど。

ハマ確かにあると思いますよ。だって、この歌詞の世界観を歌える日本人はなかなかいないですよ。

レイジショウさんは顔からして劇画タッチなんで(笑)。

——そういう意味ではこの曲も歌謡曲的な求心力があるし。

ショウシそうなんですよ。谷中さんにジュリーっていうキーワードは言わなかったんですけど、自然とこういう歌詞を上げていただいて。普段、谷中さんは歌のディレクションってあまりしないらしいんですけど、今回は歌詞がギリギリに上がったというのもあって、夜中まで歌録りに付き合ってディレクションしてくれたんですよ。"あんな濃い歌をよく歌いこなしてくれた"って言ってもらえて。

——次はTHE BAWDIESからROYくんとの「Never Mind」。ROYくんは和光学園の先輩で。ずっとお互いが鳴らすロックンロールにシンパシーを覚えていたと思うし、ROYくんとこういうルーツ色の強いストレートなロックンロールを分かち合うのもまた必然だったのかなと。

ショウそうですね。ROYくんとは当然のようにマッチできるってわかってたので。

ハマだからこそ難しいみたいな。けっこう意見が割れたんですよ。

——どういう曲にするか?

コウキそう。BAWDIESが普段リズム&ブルースに焦点を当ててるから、ポップな曲を歌ってもらったらどうなるんだろう?って思ったりもしたし。逆に俺らは普段、モロのリズム&ブルースな曲はやってないから、そこにROYくんに乗っかってもらったらどうなるんだろう?ホントにいろいろ考えて。

ハマで、1回投げたら"もっと黒いのがいい"って返事がきて。でも、"黒いの"っていろいろ解釈ができるから、迷っちゃって。お互い音楽が好きすぎて迷うみたいな。

——共通言語がありすぎて、シンプルな言葉だといろんな解釈ができるっていう。

ハマすごく幸せなことなんですけどね。

コウキモータウンっぽさも黒いってことになるし、そっちの方向で投げたらそうじゃなくて(笑)。

ショウROYくんもOKAMOTO'Sとやるならこういう曲ってイメージがあったと思うし、根本的なルーツは一緒だから、最終的にはバチッとハマって。あとは、ROYくんと一緒に歌うにあたって、俺はいかに負けないかという課題もあって。

——その戦いは緊張感あるよね。

ショウあの人の声、完全に黒人なんで(笑)。でも、それを考えるのも楽しかったし。ROYくんとこういうタイプの曲で向き合うにはどうしたらいいかって。それ以前にソングライターとしてどういう曲を書くかという意味でも挑戦だったし。

——次が民生さんとの「答えはMaybe」。民生さんとは事務所の大先輩でずっとかわいがってもらってたと思うし、曲も民生さんのフィールドに寄って、民生さん流のロック帝王学を学ぶような趣があって。

ショウみんな中学のときから大好きでしたけど、コウキが特に大ファンで。ライヴに行って、民生さんが投げたピックがコウキの顔に当たって落ちて、それをハマくんが拾うという思い出となどもありつつ(笑)。

コウキ巡り巡ってこんなことになるなんて(笑)。

ショウ曲のパターンもいろいろ考えたんですけど、"OKAMOTO'S×奥田民生"っていう文字が見えたときにみんなが想像できるものがいいなと思って。

コウキ民生さんの曲ってコードも多くないし、昔のロックのいいところを活かしながら、メロディや歌詞のよさ、キャラクターも含めて自分の音楽性を確立して、日本で最も成功したロックアーティストの1人だと思うんですよ。だから普段、ロックを聴かない人にどういうアプローチをしたらいいかを民生さんから学びたいとも思って。

レイジちなみにこの曲も一発OKでした。しかも歌録りまで。

——素晴らしい。みんなで合宿に入ったんだよね。

レイジそう。ほとんど遊んでましたけど(笑)。3日間あって、2日目の夕方くらいにようやく作業するみたいな。

ハマ釣りをやったりドライブしたり。で、"いいかげんやる?"みたいな感じで制作が始まって(笑)。

——民生さんと遊ぶことも学びみたいなところもあったんじゃないかなって。歌詞の内容もそういう感じだし。

コウキそうそう。余裕を生み出すリラックス感というか。

ショウ歌詞もホントにそういうことを意識して。民生さんの生き方ってホントにいいなと思うから。自分はああいう生き方はできないけど、ひとつの理想だと思うんですよね。もちろん、ああいう存在になるまでに相当大変な道を歩んできたとは思うんですけど。

——それを見せない美学もあるしね

ショウそうそう。力を抜くことがカッコいいっていう。そういう生き方を歌詞に反映した部分はかなりありますね。

——このアルバムは総じて"粋な男の生き方"が描かれてる思うんですよね。それぞれのコラボ相手の懐に飛び込みつつ。

ショウああ、そうですね! それぞれの男臭さがあるというか。

ハマそこにきての黒猫チェルシーですよ。

——これこそ満を持してのコラボレーションだよね。「Family Song」、これ、シンプルにいい曲。これは泣ける。

レイジ黒猫とやる曲がいちばん考えました。

ハマ民生さんともそうだけど、黒猫と俺らって既に絶対的な正解があるじゃないですか。でも、黒猫とはその正解に沿ったものにしないほうがいいなと思って。あと、お互いがそれぞれのライヴでできる曲を作ろうって。それもテーマでした。

ショウアルバムの中でもダントツにいい曲を作りたいと思った。結果的に歌詞はかなりクサいところまで歌ってますけどね。同い年で、デビュー年もデビュー日も編成まで同じってなかなかないじゃないですか。

コウキ東と西みたいなね。で、レコーディングした日がまたちょうどお互いのデビュー日だったんですよ。

——おおっ、それはすごいな。

ショウ同世代でいろんなバンドがいますけど、今回、黒猫を呼んだ意味ってすごくあるし。

——ベース以外はツイン編成で録音されていて。それも黒猫とだからこそ、だよね。

ハマベースでツインはなかなか難しいので、どうしようかってなって、(宮田)岳ちゃんにキーボードを弾いてもらって。

レイジ俺、もともとツインドラムは好きじゃないんですよ。やるとしたら、ジェームス・ブラウンみたいな黒い感じだったらいいんですけど、この曲はホントにシンプルな8ビートを俺と啓ちゃん(岡本啓佑)でずっとユニゾンで叩いてるので。でも、それが結果的にすごくよくて。息も合ってるし。

コウキギターにしても、いろんな企画ライヴを一緒にやってきて、その積み重ねが活きてるなって思う。アレンジするのがめっちゃ楽しかった。

ハマお互い普段一緒にいるとふざけたがる節があるんだけど、ここは初めてちゃんとコラボしようと。この曲のレコーディングをした日が5月26日でお互いメジャー1stアルバムをリリースした日で大事な記念日だったし、それもうれしかったです。

——9月21日からは5周年を記念したツアー「OKAMOTO'S 5th Anniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR!」がスタートします。ファイナルは単独としては初の日比谷野外大音楽堂です。

ショウコラボ盤を出したあとのツアーファイナルが野音ですからね。みんな誰か来るんじゃないかって期待すると思うんですけど(笑)。

——まあ期待するよね(笑)。

ショウあと、実は『Let It V』と前回のツアーには1つ伏線があって。「虹」という曲を書いたときから野音は決まっていたんですね。5周年を祝う野外ライヴで、雨が降っても降らなくても映える曲を作ろうということで「虹」を書いて。さらに、結果的にアルバムのラストナンバーになって、すごく大事な曲になったんですけど、前回のツアーではあえてやらずに客出しのSEで留めたんですよ。

ハマあえて。あとは、「虹」も4人+誰かでやりたいので。

ショウ「虹」でも誰か来るかもよっていうね。

——「虹」を野音で聴いたら間違いなく感動すると思う。多くの人が大滝詠一さんのことを思い浮かべるだろうし。

ハマそうですね。大滝さんにも聴いてもらいたかった。こればかりはしょうがないですよね。大滝さんが亡くなったのが去年末で、『Let It V』のリリースが1月で。ギリギリで間に合わなかったから。でも、野音で「虹」をできるのがホントに楽しみです。

レイジあと、今回のツアーは前回のツアーとは別物なので。前回はアルバムツアーで、今回は完全に5周年のバースデーパーティーだから、とにかくみんなに来てもらいたいなって。

——よし!

ハマ今回のツアーは地方もこれまでと比較して大きなハコでやりますけど、いちばんOKAMOTO'Sというバンドの魅力をわかりやすく伝えられるライヴになると思うので。"なんか友だちがいいって言ってたな"くらいの人にもぜひ来てほしい。

ショウYouTubeで何回か観たことがあるっていう人もね。

コウキかつ長いことファンでいてくれてる人たちにも喜んでもらえる内容になると思うので。あと、あらためて最後に言っておきたいのは、コラボアルバムってサブ的な企画盤って思われるかもしれないけど、僕らにとってはこれも本流なので。

——うん、本気も本気のコラボアルバム。

コウキお茶を濁す感じはまったくないので。俺らが言ってきたこと、考えてきたことを具体的に示す大きな作品だってことを伝えておきたいです。

取材・文/三宅正一(ONBU)